フェアタイムQ&A

フェアタイムに関しては沢山の質問があると思います。
今まで、実用レベルの精度を実現するための研究に心血を注いでおりましたが、なんとかその目処がたちましたので、これからは気合を入れて様々な疑問にお答えしたいと思っています。
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◆◆◆◆◆ Answer ◆◆◆◆◆
A1:それは絶対にありません。理由は簡単で、変換関数が単調増加関数で設計されているからです。
A2:もちろん、あります。実際のレース条件が仮想的に作り出した基準とする条件より良かった場合には、フェアタイムはグロスタイムより悪くなります。1995年以降のエリートマラソン大会についても、幾つかの大会についてはこうした結果が出ています。
また、距離が短かったような場合でも悪くなるように変換されます。
A3:違います。走る時間が違うのだから当然ですけどね。もちろん、遅い人の方が補正量の絶対値は大きくなります。
A4:東京国際マラソンは2007年の東京マラソンへの移行に伴ってコースが激変し、2008年の湘南国際マラソンは方向が逆になり、2008年の青島太平洋マラソンは市街地を廻るコースにリニュアルされました。マラソン大会においてコースの変更はしょっちゅうですね。でも、こんなときこそフェアタイムが真価を発揮する時です。
たとえば東京国際女子マラソンの場合、2008年までの東京での大会と2009年からの横浜での大会では、開催時期こそ一緒ですが、コースは高低差、路面、景観、観衆、風、形態(折り返しと周回)など、全く異なるコースになります。したがって、記録の連続性という意味では完璧に遮断されることになります。しかしフェアタイムは、グロスタイムを「持ちタイム条件」という仮想的に規格化されたコースでの記録に変換した値ですから、コースの変更に関わらずその前後で連続性を有する記録となります。
A5:もしそうした作為的な行為でフェアタイムが操作されたら大変ですね。でも、結論的に言うと、そんなことをしても全体への影響はほとんどありません。1人じゃなく、3人とか5人とかがつるんでそういうことをしても無駄です。
こうした問題を「ダミー問題」と呼んでいます。これがフェアタイムを算出する上で、一番、難しい問題かもしれません。したがって、最も苦労したところであり、またこの方法論が輝きを放つところでもあります。その説明は長くなるのでまたにしますが、答えを話す前に、皆さんもどうしたらいいか考えてみてください。
A6:本当です。昔、ある国で好記録が続出する大会がありましたね。もしその原因が距離不足ということであったならば、フェアタイムを計算することによって何メートルぐらい短かったかまで分かります。逆に長すぎた場合でも、適正な距離の記録として変換されます。距離の長短は選手全員に及ぶ誤差要因(系統誤差要因)なので、規格化処理によってこれに依拠する誤差は除去されるのです。
ところで、2007年1月21日に開催された千葉マリンマラソンでは、係員の誘導ミスにより距離が2.8145kmも短くなってしまいました。この場合でも、もちろん、フェアタイムは適正な距離、つまり21.0975kmを走った場合の記録を表すことになります。しかも、その算出過程でどのくらい正規の距離と異なっていたかという情報は必要ないのです。つまり、距離が不正確であるということが未知であった場合でも、あるいは公開されなかった場合でも、フェアタイムは距離の不正確さも織り込んで補正してくれているのです。
もし千葉マリンマラソンのフェアタイムが提供できるようになっていたら、多くのランナーの不満はかなり緩和されたことでしょう。
A7:持ちタイムに応じた重みを設けています。これは、走力の違いということではなく、記録の信頼性の違いというふうに解釈しています。つまり、持ちタイムのいい人はいっぱい練習しているからグロスタイムの信頼性は高いが、持ちタイムの遅い人は余り練習していないからその信頼性は低いと考えているわけです。重みの付けの方法は統計データを根拠として定めています。
A8:年齢、身長・体重、人種に関しては全く考慮しません。入学試験や就職試験でこうしたことが問われたら大変ですね。同じ思想です。要するに、処理における作為性を排除するという考え方です。
ただし性別に関しては、男女の身体能力の違いから、標本に対する重み付けについて両者に差を設けています。つまり、同じ2時間30分でも、男子では市民ランナーのトップクラスですが女子ではエリートランナーのトップクラスということで、その価値に差を設ける必要があると考えているわけです。
A9:
言葉使いは本当に難しいですね。特に本理論のように新しい概念を提示するときは大変です。
実は、本理論の構築に当り、数十の新しい概念や処理方法およびそれらに対応する用語を創作せざるを得ませんでした。「フェアタイム」もその中の一つです。ちなみに「実走条件」や「持ちタイム条件」、「仮想測定系」等も私の造語です。
フェアタイムは、かつては「補正タイム」と称していましたので、まずこの語源から説明します。
「補正」は「測定学(metrology)」の分野では特別に定義された用語で、「より真に近い値を求めるために測定値に対して行う操作」を意味します。したがって「補正タイム」という言葉は測定値であるマラソンの記録を補正した値ということで、由緒正しい用語なのです。
ただ、直観的に意味が分かりにくいというご意見が少なくなく、また外国への普及も考慮し、2013年7月に「補正タイム」は「フェアタイム」に改称しました。